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※この物語はフィクションです

(前回・弐章弐幕の最終節より)

ネイバーランドから脱出した忍者学校の生徒たち。
次に彼らを待ち受けていたのは……



【 弐章参幕 プロローグ 】

…………

「あれ?あなた方は!! すいません!すいません!起きて!起きて!!」
気がついたら目の前には、頭の上にお皿が乗っかってる変わった人。

『え?今度はなに…??』
「なにって… あ! あなたたち!救世主でしょ!!突然現れたんだ!そうに決まってる!!」

『何を言ってるの…??』

…って、アレ?この人 …人じゃない!?


【 プロローグ 弐 】

梨源郷(りげんきょう)では、かなり長い間、何も変化のない毎日が流れていた。
平和と言えば平和なのだが、あまりに全てが退屈すぎる日々。

杏村(あんずむら)の「サンさん」は不思議に思っていた。
「なんでこんなにも何も起こらないんだ??」

何でも自分で調べたい性格のサンさん。
彼女は理由を調べるため「歴史の教科書」を持って旅に出ることに。
かつて、この国を作ったと言われる「伝説の僧」の真似をしながら…



【 壱 】

忍者学校の生徒たちは、キョトンとしていた。

忍者の里「雲の国」を目指して、飛んだ(ワープした)はずが、今度は「梨源郷」という場所だったこともあるのだが、それ以上にも、いきなり「救世主」と呼ばれたことがその原因だ。

しかも、「救世主だ!」と騒いでいる人の職業は「カッパ」だと言う…

おかしな事だらけで、忍者学校教師の「おとく」のツッコミも間に合わない。

『いったいどこをつっこんだら分かってもらえるのか…』


【 弐 】

話しかけてきた「職業カッパ」の人は、ごうちゃん(本名は「サゴウ・ジョウタ」)という名前らしい。

かなり思い込みの激しい感じで、どれだけ「違う」と言っても、完全に救世主と勘違いしている模様。
「さすが救世主様方!ご謙遜なさって~ さ!救世主様! あちらへ!」


おとくが強引に連れて行かれそうになった時だった。

「あっ! やはりいたかー! おとくー!」

アレ? 聞いたことのある声…


【 参 】

声の主は、「頭領」と言う人だった。
頭領は、三ノ国(みのくに)の人で「ネイバーランド」にも一緒にワープしてしまった人。

LinkIcon頭領については弐章序幕(三ノ国編)
LinkIconさらに弐章弐幕(ネイバーランド編)

ごうちゃん「こ、これは!救世主様っ!」

ん? 違うぞ。 ごうちゃん。

頭領「うむ! わしは救世主である!!」

……
『おーーーーーいっ!!』
おとくは全力でつっこんだ。今日一のツッコミだ。

『ちょっと!頭領!! コレ、どーゆうことなんですか!!』
「え? いや、なんかいきなり救世主!とか言われるから、気分良くなってな! とりあえず救世主、やることにしたの。」
『とりあえずって…』

頭領の話によると、今回も何故か生徒たちと共にワープしてしまったようだったが、「勘違いされていた方が動きやすい」と言う理由から、救世主をやることにしたらしい。

「でな、おとく。 この梨源郷、めっちゃ平和な国らしいよ。 平和すぎておまわりさんもいないんだってさ。」
『それ、すごくないですか??』
「そうなんだよ。すごいんだよ。 そんな毎日平和すぎる国に突然、別の人たちがワープしてきたら…」
『…それは、かなりのビックニュースですね。』

二人がコソコソ話しているのが気になりすぎるごうちゃん。
「あの~~ すいません!救世主様! 実はですね、今、困っていることがあるんですが!」
「はいはい。 なんでも言ってみなさい。」
「はい! 今、オレとオレの友だちの「さんサン」の二人で、サルとブタの仲間を探しているんですが! 探すのを手伝ってもらえないでしょうか!!」

「はいはい。いーよ!」
勝手に引き受けてしまう頭領に腹を立てながらも、おとくと生徒たちは、人探しをしながら「雲の国」に帰る方法を探すことにした。


【 四 】

その日の夜、作戦会議…

村の中で、「仲間を探すふり」をしながら、「帰る方法」を探していた忍者学校の生徒たちであったが…
結局、「サル」と「ブタ」の仲間は見つからず、前回のワープの時も見つけた、謎の暗号だけが見つかっていた。

「その暗号… どういうことだろう…」


暗号を解くと、分かったのは「テ・ン・ジ・ク」という文字…

『テンジク?? これだけでは、さっぱり分かりませんね。』
「うむ。 しかし、これはきっとワープするための何かのヒントであるのであろう… ただ、この話、絶対にごうちゃんたちにはナイショじゃぞ!」

『はい。分かりました。って… ちょっと!なんでこんなグチャグチャなんですか!!』

頭領や生徒たちの前には、暗号の謎解きで使った物が無造作に散らかっていた。
『頭領! ちゃんとキレイに片づけてください! わたし、この散らかってる感じ、スゴイ嫌いなんです!!』

「ぉ… スマンスマン。 おとくはスゴイきれい好きじゃったのう。 ホレ、みんなも早く片付けよう。」
『そこも、ちゃんと整えてください!!』

「お! 誰か来るぞ! みんな、さっきの話はくれぐれも、シーーじゃからな!」


【 五 】

「どーもー! アレ?皆さんお揃いで!!」
ごうちゃんの登場である。

「皆さん、先ほどはどうも。ごうちゃんから聞いていますよ! 皆さんが救世主だと!」
後ろにいるのは、さんサンだ。

「で、見つかりました?サルとブタの仲間!!」
『それが… 見つかってないんです。』

「えーーーー! 困ります!!」

どうやら、ごうちゃんの友だちの「さんサン」は、退屈な毎日の原因をつきとめるために、この梨源郷を作ったと言われている伝説のお坊さん「四蔵(よんぞう)」とその仲間たちの真似をして旅をすれば、何か分かるかもしれない!と思ったらしい。

さんサンは力説する。
「見てください! この教科書にはこの国を作ったと言われる伝説のお坊さんは、サル、ブタ、カッパの仲間と共に「テンジク」という所に旅に出た。と書いてあります! それなのに… サルとブタの仲間が見つからない!!」

『え? テンジク??』

それまで黙って聞いていたごうちゃんが、おもむろに口を開いた。
「…仕方ありません。 こうなったら、もう、あなたたちにサルとブタの仲間になってもらうしかありませんね。」
『はい? ちょ、どういう意味ですか?』

「だ~か~ら~! この中からサルとブタを探します!!」
『え??』

ごうちゃんは強引に話を続ける。
「いいですか皆さん! ブタって、汚いイメージをお持ちだと思いますが…」
『そうね。 たしかにそのイメージ、あるわね!』

「実は違うんです! ブタって、スゴーーーーイ きれい好きなんです!!」
『え?』

「だから!! この中で、キ・レ・イ・好・き・な・人! いますか!!」

一同、静まりかえる…
そんな中、頭領が気まずそうに… そして、静かにおとくの方に指を指す…

『ちょっとーーー!! 確かに!わたしはきれい好きだけど!!』

キレてるおとくを尻目に、さんサンは朗らかに言う。
「決まりですね♪」

『ダメ! わたしは認めない!!』

困ったごうちゃん。
「えぇ~? じゃあ他に誰かきれい好きな人いるんですか? もう一度聞きます! 誰が、ブタ!やりますか!」

またしても一同静まりかえる…

あまりの雰囲気に頭領が口を開く。
「ぁ… じゃ、じゃぁ、わし、ブタ、やろっかなー」
さんサン「いや!私が!」
ごうちゃん「いやいや、オレが!」

三人が静かにおとくをチラっと見る…

おとく『ぇ… じゃあ、わたしが…』

「どーぞどーぞどーぞ!!」

『ちょっと!なんなのこの国はっ!! みんなしてわたしのことブタって! どうなってるの!!』
おとくが「ドンっ」と地団駄を踏んだ途端、
他の全員がピョンと飛んでしまった。 …音響照明係さえも。

『そんなに重くなーーーい!!』
「まぁまぁ… ホレ、旅で目指す先がテンジクと言っていたじゃないか。一緒に旅をすれば忍者の「雲の国」にワープ出来るかもしれないぞ? ここはひとつ、こらえて…」

『そうですけどーー』 と、はぶててるおとくをよそに、サル役は頭領がやることで、すぐに決まったのだった。

さんサン「えっーと… サルを仲間にした場合、頭のワッカみたいのを渡さないといけない。と教科書に書いてあるんですが… ないですね。」
「あ!じゃあ、さんサン! たまたま、そこに落ちてた、このお面みたいなやつでいいんじゃない?」
そう言いながら、黒いお面を差し出すごうちゃん。

「え?コレ? コレでいいの? コレ頭のワッカとゆーより、なんだか悪者みたいだけど… 本当にコレでいいの?」 と頭領は少し困惑した。

「いいですいいです! 形だけですから♪」
まったくに異に介さないさんサンであった…


【 六 】

キレキレのおとくによる明日の作戦に向けた修行が終わった頃、
さんサンとごうちゃんは先に家に戻っていった。

――――――
『帰りました?』
「そうじゃな…」

『とにかく! わたしとしては、すごーーく!不本意ですが!!』
「まぁまぁ、帰るためじゃ。 もう少しだけガマンしてくれ。」

『ぶーー!』
「お?」
『なんですかっ!!』
「なんでもないなんでもない!」
頭領は慌てて取り繕った。

その時だった。
まるで、電波の悪いラジオのような音が聞こえてきた…

――――――――
ガチャ、ザ、ザ、ザ、 コチラ、みノくに、桃太。 と、、りょ、、きこ、てますか

頭領「え??桃太?? 桃太なのか!!」

ザ、ザ、う~ん、、そっちの声は聞こえないな… シカタない、、きこえているとシンじて

コちラ、みのくに、桃た。 ザ、ザ、 この交信は、頭領とにんジャのみんナ、、 ザ、 あたまにちょクセツ語りかケテいまス

なので、ザ、そノホかの人にはきコエません

・・・・・・・・・・・・

――――――――
桃太からの突然の交信だった。
桃太と言うのは、頭領と同じ「三ノ国(みのくに)」に住んでいる青年で、前回の「ネイバーランド」の、更に前の回の登場人物である。

LinkIcon桃太(ももた)についてはコチラ!

桃太の交信で分かったのは、
・桃太は秘密を知ってしまったから、誰かに追われているっぽい?
・「夢の世界」という単語と、「雲海(うんかい)」という人っぽい名前が何回か出てきた?
・あと、最後に「みんな消える…」という単語を残して、誰かに見つかったっぽい?交信終了?

――――――――
「桃太… 大丈夫かのう… あやつは、何を伝えようとしてたんじゃ?」
『雲海というのは、わたしたち忍者学校の校長先生の名前ではありますけど… それにしても、なんかとっても大変そうでしたね… ひょっとして悪い忍者?』

「さっぱり、分からん… とりあえずじゃ!今の話は、さんサンやごうちゃんにはナイショじゃ!」
『…それがいいですね。』

雲の国に帰ろうとする、おとくや生徒たち。
新たな謎を残したまま、夜は更けていった…



【 七 】

翌朝…

さんサンとごうちゃんが来る前に、おとくを中心に、
「本日の謎の調査ポイント」について話し合われていた。

『と、いう訳で、みんな! 雲の国に帰るためにシッカリ調査してきてね!』
「お! さんサンたち、来なさったようじゃぞ!」

――――――――
「皆さん、おはようございます…」
…アレ? いつもテンション高めのごうちゃんの様子がおかしい。

『二人ともおはよう! …どうしたの?なんかあったの??』
「それが… 大変な事件があったんです。」

『え? この国って平和だったんじゃないの??』
「そのハズだったんですが… 今朝、村の入口のあたりで怪しいやつが見つかったんです。」

『え!!』
「あ、でも大丈夫なんです。もう捕まえましたから。」

『ぇ? じゃあ、なんでそんなテンション低いの?』
「あの… 今まで事件がなさすぎて… こういう時、どういう反応していいのか分からないんです…」

『だれもケガしてなくて、もう大丈夫なら… 別にいつもどおりのテンションでいいんだよ。 とゆーか、解決したなら、むしろ喜んでいいんじゃないの?』
「あ! そんな感じが正解ですか! な~んだ! え?じゃあ、捕まえたやつ、救世主様たちにも見てもらおう! ちょっと待っててくださいねーーっ!!」

頭領は腕組みをしながら、
「こんな展開、前にもなかったっけ?」と、首をかしげている。
『…頭領? ネイバーランドで捕まってたのは、あなたでしたよ?』


【 八 】

ごうちゃんが怪しいやつをつれてきた。
「コイツです!救世主様!!」

…赤い服にアフロの髪型 …見たことあるぞ。この人。

ごうちゃん「あきらかに怪しいやつだ!目的はなんだ!」
…目的を聞かれている怪しいやつは、口をふさがれているので喋れない。

さんサン「まぁ、とってもトロイ人でしたので、すぐに捕まえれたんですけどね♪」

怪しいやつは明らかに頭領に向って何かを言おうとしていた。

頭領は頭をポリポリしながら、
「…あの~ スイマセン。 その人、知り合いです。」

驚くさんサン
「あら? そうでしたの? これは失礼しました!」

アフロの怪しいやつの縄は解かれた。
怪しい人「頭領~ ひどいですよ~ なんで、もっと早く助けてくれなかったんですかー!」
頭領「いや、ちょっとおもしろかったからさ。 久しぶりだね、鬼ちゃん」

鬼ちゃんと言うのは、頭領のいた「三ノ国」にワープしてきてしまったお兄さんで、桃太同様、前々回の登場人物である。

LinkIcon鬼ちゃんについてもコチラ

鬼ちゃんの話によると、
・鬼ちゃんは、頭領が行方不明と聞いて探しに来たらしい
・悪い忍者についても調べていて、どうやら悪い忍者は「忍者学校の生徒たちが、ワープすること」が困るっぽい。とのこと
・なので、今、生徒たちのいるこの国にも「絶対来る!」らしい


【 九 】

鬼ちゃんからの情報を得た、忍者学校の生徒たちは「謎の探索任務」に行く前に、武器を作って備えることとした。

そして、任務開始!




【 壱〇 】

そして夜、調査報告会…

謎の暗号を解いていくと…

「テ = く」 「ン = も」 「ジ = の」 「ク = 国」

「テンジク」=「くもの国」 という結果に…

驚くおとく…
『えぇーーー! これってどういうコト?? なんで、テンジクがわたしたちの故郷の雲の国なの!?』

状況がよく分かっていない、さんサンとごうちゃんに頭領が説明する。
雲の国と言うのは、忍者学校のみんなが帰ろうとしている場所だというコト。
だけど、その方法がまだ分からなくて困っているというコト。


その時だった。
昨晩と同じように、突然、電波の悪いラジオのような音が聞こえてきた。

――――――――
ガチャ、ザ、ザ、ザ、 コチラ、みノくに、桃太。 、、きこえ、、すか

鬼ちゃん「アレ??桃太じゃん! え?コレ、どーゆうコト?」
頭領「いいから、静かにせい!」

ザ、ザ、やっパり、、ソっちのコエはきこエナイな… 、ザ、ザザ、アれ? このケハイ、ザ、オにちャん?

トにかクじかん、、ザ、、ないカラ、、ザ、かンタんに、ザ、なスケど…

・・・・・・・・・・・・

――――――――
途切れ途切れの桃太の話をまとめると、
・桃太は「全部知ってしまった」らしい、そのため、悪い忍者に追われているっぽい
・悪い忍者は、この梨源郷にも来るらしいが、強くなっているので頭領や生徒のみんなでは敵わない
・だけど、悪い忍者を捕まえないといけない
・信じられないかもしれないけど、頭領は「案内人」?だから、強くなれるらしい
・会話の途中に「夢」という単語が、たくさん出てきた
・あと、最後に「忍者のみんな…」という単語を残して、電波が悪くなった?交信終了?

――――――――
『え? 待って待って!! 今ので終わり!? 最後に「忍者のみんな」って言ってたよね??』
頭領「言ってたな。 それにしても… 悪い忍者を捕まえる? わしが強くなれる? 信じる??」

さんサン「あの~ なんと言っていたのですか?」
頭領「あ、そうか… 聞こえてないんじゃったな。 ま、とりあえず悪い忍者が来て、それを捕まえないといけないということらしいんじゃ。」


【 壱壱 】

沈んだ空気が流れた。
強くなった悪い忍者が来るらしい。そして、桃太も心配だ。

鬼ちゃん「な~んだか、気持ちが沈んじゃいましたね…」
ごうちゃん「いや、怖いよ。 悪い忍者が来るんでしょ?」

おとく『過剰に怖がることはないわ。 わたしたちはこんなにたくさんいるんだから大丈夫!』
さんサン「そうなんですが…」

またしても、一同静まりかえる。

鬼ちゃん「怖いけど。 おとくの言うとおり、みんなもいるし大丈夫だよ! とにかく!今、ネガティブな気持ちで元気がないのが一番いけない!!  頭領!いつものアレ! やってくださいよ!山の宴!」
頭領「え?」

鬼ちゃん「アレをやると元気になるんですよ! 今、みんな不安な気持ちなので、ぜひやりましょう!!」

鬼ちゃんの強引や優しさから、「山の宴」が始まった。


【 壱弐 】

鬼ちゃん「やっ~ぱり! 元気になりますよ!」
ごうちゃん「山の宴! はまりそうですよ!」
山の宴を終え、みんな元気になっていた。

『で、頭領! 明日の作戦を考える前に整理しておきたいのですが… まず、悪い忍者がこっちにも来る。 でも、悪い忍者は捕まえないといけない。 で、頭領も忍術が使える程強くなれる。』


頭領「そこじゃよ! 最後のが一番分からないんじゃ。 わしは忍者じゃないし、どちらかと言うと腰痛持ちで、動きは良くない… いきなり強くなれる!信じて!って言われてもなぁ…」

『あと、案内人とも…』
「もう、さっぱりじゃ。」

『まぁ、なにも情報がないより、ずっとましです。とにかく分かりました。』
そう言うと、おとくは明日の作戦を考えるため一人宿舎に向ったのだった。

……


【 壱参 】

……

宴が終わり、ゆったりとした空気が流れる中、
一番最初に異変に気づいたのは頭領だった。

が、それをみんなに伝えようとした時、すでに近くまで忍び寄っていた。

――――――
「むっ! なにやつ!! あ!貴様は!!」

いつの間にか「それ」は目の前にいた
「また出たか、キジのおっさん! さすがは案内人…」

「頭領… こいつは?…」
ごうちゃんが身構える

「ごうちゃん、こいつが悪い忍者だ… 本当に来た…」

「戦いますよ!!私たちも!!」
さんサンは勇気を出して、ジリっと前に出た

「頭領! 自分がひきつけます! その間にみんなで捕まえて!」
鬼ちゃんはそう言い終わる前に、一人走り出した!

「捕まえるだと? どこで聞いたか知らないが… やってみろ!この赤鬼がーーーーーっ!!」

悪い忍者が鬼ちゃんに襲いかかる!
鬼ちゃんは敵の剣を、尻もちをつきながら、なんとか後ろにかわした

そのタイミングで、さんサンとごうちゃんが挟み撃ちで敵に向かっていく!
が、振り返った敵の、術によって飛ばされてしまう

「くそーー!」 身体の動かないごうちゃんが叫ぶ

鬼ちゃんはなんとか敵の足にしがみつこうとするが、動きを完全に見破られ、いとも簡単に蹴られてしまった

「鬼ちゃん!!」 頭領が叫ぶ

「あとは、お前だけだな。老いぼれ。」

……


【 壱四 】

敵の攻撃を、避けるので精一杯の頭領
2回、3回と攻撃をかわしたが、ついに胸ぐらをつかまれ投げ飛ばされた

――――――――
ガチャ、ザザ、、 とうリョウ! とウりょう!!
ザザ、ザ、 いっタデしょ! ザザ、つよクなれルって!!
ザ、、でキるってしンジルんだ!!
ザザ、ザ、 ザ…
――――――――
敵に飛ばされ、フラフラと立ち上がろうとする頭領… 聞こえてくる声…

「もう… 信じるしか 他に方法はないようじゃな… 」

頭領は、出来る訳ないと思うのをやめた

信じないことをやめた


【 壱五 】

――――――――
スっと立ち上がる頭領

今、敵から仲間を守るために必要なものは何か
瞬間的に思いを巡らせたどりついたものは…


「忍法! 口寄せっ!! ハっ!!」

声と同時に、頭領の手には突然、長い赤い武器が現れた!

「こ、これは…」 ごうちゃんがかつて歴史の教科書の中で習った物語を思い出した

「これは! サルの武器! ニョイボウです!!」 さんサンは泣きながら叫んだ
その姿は、まさしく伝説の僧の仲間、サルであった

――――――――
敵は少したじろいだが、剣を構えなおす
反時計廻りに、頭領と敵はにらみあいながら旋回

二人は同時に地面を蹴って一気に間合いが縮まった
頭領の攻撃に敵は防戦だ

「がんばれ!頭領」 鬼ちゃんが叫ぶ

敵も負けてはいない、剣を今までより早く振りぬくが頭領にすべてふせがれる

敵は肩で息をしながら、更に切りかかった!
その瞬間、「ハっ!!」という掛け声と同時の頭領の術で吹っ飛んだ

「おのれ… 覚えておれ… 」
そう言い残して、敵は立ち上がり逃げようとするが、生徒たちが道をふさぐ

なぜか生徒たちには手をださない敵は、頭領の方を振り返り
「こうやろうーー!」と、襲いかかる


【 壱六 】

敵の悪あがき…
悪い忍者は、最早、頭領の敵ではなかった

最後は実にあっけなく、敵が切りかかろうとするところを、ガラ空きの胴を打ち貫いたのだった
「ぅ ぐ…… 」
敵がガクっと膝から崩れる

しかし頭領も、限界を超えた力を出してしまったためか、その場から動けない

その時、物音を聞きつけて急いで帰ってきた、おとく

『え??』

状況を呑み込めないおとくにごうちゃんが叫ぶ
「おとく! そいつが悪い忍者だ!! 捕まえて!」

その瞬間、おとくは一瞬にして、敵を縛り上げた

…みんなすっかり忘れていたが、おとくは忍者学校の教師。 さすがである。

――――――――

鬼ちゃん「スゴイ!捕まえた!」
ごうちゃん「どうしますか!」
頭領「こやつの正体… いったい…」
鬼ちゃん「こいつのマスク! 取りましょう!」
頭領「うむ。」

頭領が、悪い忍者のマスクに手をかける。
みんなが敵の顔を覗き込む中、おとくは固まってしまった。

『え… なんで…??』

さんサン「え? おとくさん? 知っているんですか??」

『 さ、さとみ… 里見先生?? え? え?? なんで…?? 』

……



【 壱七 】

事件から一夜…
生徒たちは朝の例会のため集まっていた。

やってきたのは、頭領とさんサン、ごうちゃん、そして鬼ちゃん。
「さて、で、昨晩の一件なんじゃが…」 頭領は切り出した。

頭領の話によると「悪い忍者」の正体は、雲の国「風渡(かぜわたり)忍者学校」の教師「里見十兵衛(さとみじゅうべえ)」という者らしい。 つまり、おとくとは一緒に働いていた仲間ということになる。
現在、おとくが里見に事情を聞いている最中なんだそうだが、なかなか喋らないらしい。

「う~ん… でもですよ。 ずっと敵で狙われてたこっちとしては、いきなり仲間でした~って言われてもねぇ…」
いつも優しい鬼ちゃんが、明らかに不服そうだ。
「いったいこれから、どうなるんですかねぇ…」

……
「ん?なにやつ!!」 頭領が突然叫ぶ。

向こうからやってきたのは… ネイバーランドでも出てきたあの人だった。
「あ~頭領! や~っと、見つけたよ~」

「たけちゃん! また来てくれたのか!」
「え? また?? あ、みんなも久しぶり~」

やってきたのは、たけちゃん。
たけちゃんと言うのは、頭領と同じ「三ノ国」出身の人で桃太の友だちである。 前回の「ネイバーランド」では、みんながピンチの時に突然現れて助けてくれた経緯があった。

たけちゃんと話す頭領だったが、なぜか話がかみ合わない。
…そして、考え込むたけちゃん。

「ひょっとしてなんだけど… そのネイバーランドにボク、なにしに行ったの??」
「なにって… わしらはたけちゃんに助けられたんじゃよ。 なぁ、みんな。」

「…う~ん、 それ、ちょっとマズイね。」
「え? なんで??」

たけちゃんによると、たけちゃん自身はネイバーランドに行ったこともないし、助けた覚えもないらしい。 たけちゃんの予想としては、時間を巻き戻してワープした?と言っているが…??

「と、とにかく! わしらはたけちゃんが来てくれなかったら、やられていたんだ! たけちゃん会ってすぐで申し訳ないんじゃけど、今すぐネイバーランドに行ってくれ!」
「うん!分かったよ~ じゃあ、ちょちょいっと助けてくる~」

そう言い残してたけちゃんは「一人用の瞬間移動装置」で去っていった。

「なんか、たけちゃん、かっこいいっすね~」
鬼ちゃんはポカーンと眺めていた。


【 壱八 】

『みんな、お待たせ~』
おとくがやってきたのは、朝の例会が終わり、随分たってからだった。
そして、おとくの後ろには、里見…

『ゴメンゴメン! ようやく話が整理できました。』

みんな、おとくと里見からなんとなく距離を取り、どこかぎこちない様子。

頭領が口を開く
「して、そこの者! なぜ、わしらを襲う?」
「はい、数々のご無礼申し訳ありませんでした。 それがし、雲の国の忍者頭の雲海さんの命を受けて、生徒たちを追っておりました。」
「雲海? 桃太も言っておったな…」

里見の話によると、
現在、雲の国では「動乱」がおこっているらしい。 その大変な動乱に生徒たちを巻き込む訳にはいかない。生徒たちだけでも守らないといけない。と考えた「雲海」という人は忍術を使って生徒たちを安全な国にワープさせたらしい。
それで、里見は雲海という人から「生徒たちを雲の国に戻してはいけない」と言われてやってきていたそうだ。

そこまで聞いた鬼ちゃんは思わず声をあげる。
「それだったら、始めからそう言えばいいじゃん!」

「そうなんですが… 」 里見は続ける。
里見は、もう一つ「生徒たちに気づかれてはいけない」という命令を受けていたと言う。 なので、ワープさせないようにと、「敵」という形でジャマをしてたんだとか。

「なるほどですね。なんとなく分かりましたね。」 さんサンは言う。

「え? マジ? オレ、全然、さっぱり分からないんですけど~」
…ごうちゃんは、よく分かっていないようである。

「だから~ 雲海ってのが悪いってことでしょ?」
…鬼ちゃんも、よく分かっていないようだ。

『いや、違うって!』 おとくが再び細かく説明をするが…
鬼ちゃんは「生徒を守るために、雲の国に帰さないようにするのは分かるけど、なんで敵なんだ?」と食い下がる。

『だからー! 里見先生は「生徒たちに気づかれてはいけない」って命令を受けていたからだって言ってるでしょ!!』

ご&鬼「なんで?」

『そんなのわたしが知る訳ないでしょうがっ!! 里見先生!なんでですか!!』
おとくはキレキレである。

「あ、そ、それはですね…」 里見に話によると…
動乱が終わって生徒たちが雲の国に戻った時、「自分たちだけ守られていた」って思ってほしくなかったからだと言う。 里見いわく「雲海さんの優しさ」なんだとか…


【 壱九 】

ずっと聞いていた頭領は、眉間にシワを寄せている。
「なるほどねぇ… でも、急に仲良くなれって言われてもねぇ…」

里見がグイっと一歩前に出る。
「そんな都合の良いことを言うつもりはありません! ただ、それがしは! もう見つかってしまいましたが! 動乱が終わるまで生徒たちを守らなければなりません!! それがしは、どうなっても構いません! 生徒たちを! 生徒たちを雲の国にワープさせてはなりません!!」

「… ~ん、分かったよ。 そんな風に言われちゃあなぁ。 なぁ鬼ちゃん?」
頭領は突然、アフロに話をふった。
「ぇえー! じ、自分ですか!? え? あ、はい! 仲良くやりましょ!仲良く!」



【 弐〇 】

……
「ん?コレは? なにやつ!!」 頭領がまた、突然叫ぶ

「お!頭領! おひさ~!」
やってきたのは、たけちゃんとケンカ中のあの人だった。

「あ!ハオッチ!」
「わお!鬼ちゃんまでいるのかよ! あのさ、たけちゃんいる?」

ハオッチと言うのは、「三ノ国」に住んでいる人で頭領や桃太、たけちゃん、鬼ちゃんのかつての仲間である。 前回の「ネイバーランド」に来たたけちゃんの話によると、二人はケンカ中なんだとか?

ハオッチにケンカの原因を聞く頭領…
すると、原因は「たけちゃんのポッキーを、ハオッチが勝手に食べてしまったこと」 なんだとか…

「そんなことで??」
「そう。そんなこと。 まぁ、ケンカの原因なんて、そんなもんさ! みんなもそんな経験あるんじゃない? まぁ、でもさ、今回はオレっちが悪かったと思ってさ~」

「そうじゃな… 完全におぬしが悪いのう。」
「だから、謝ろうと思って一応、買ってきたんだよね。 プリッツ。」

………
(この後、たけちゃんがネイバーランドから戻ってきて、二人は仲直りしようとするんですが…話が長いのと、本編とあまり関係ない話ですので、割愛いたします)

(なお、仲直りの後、おとくの提案により、「全員で色々な剣術を磨こう」という展開になっていきます。)


【 弐壱 】

………
剣術の修行も終わり、里見との距離もずいぶん縮まっていた。

だんたんと和気あいあいとなっていく雰囲気。
しかし、頭領は桃太の言葉が引っかかったままだった。

そんな頭領をよそに、ごうちゃんのテンションは高い。
「そうだ!みなさん! アレやりませんか? アレ!山の宴のつづき! オレ、アレがすごい気に入っちゃたんだよね!」
「お!いいんじゃない! ね?頭領!」 鬼ちゃんも続く。

「お、おう。そうじゃな…」


【 弐弐 】

宴が終わる。

さ~て、ここまで一緒に過ごせば、さすがにみんな仲良くなったんじゃない? さて、これから何しますか。 動乱が終わるまで結構時間もかかりそうですよね~

おとくですらテンションが高めだ。その言葉に里見が続く…

そうですね~ まぁ、でもここは 「夢の世界」 ですから! な~んでもできますよ!


( ゆめのせかい?? どういうことじゃ? )


なぁ! オレっち提案があるんだけど! 鬼ちゃんをみんなでおっかけまわす「逆・鬼ゴッコ」ってどう??

それって、イジメにつながりませんか?


( 夢の世界… みんな消える… 案内… 人… )


じゃあ、鬼とブタを追っかけるルールにしましょう!

あんた、何言ってるか分かってるの!

あははは~おかしー なんて楽しいの!


( おかしい? 何か… 何かが… おかしい… )


【 弐参 】



「ちょっと待てっ!!」


「里見とやら、おぬし、さっきココを ”夢の世界” といったな!」

はっ…… しまっ……

「夢の世界… わしらの今までのワープは、 ”ただ場所を移動していただけ” ではないのか? おぬし! わしらに隠してることがあるんじゃないのか!」

いや… その…

「桃太は… わしらのことを ”夢” と言っていた! そして、ここは雲海が作り出した?? どうなんじゃ?」

ちょっと頭領??

「おとく!黙っておれ! 返事はないのか!!」

……

「やはりそうか!! 分かったぞ桃太!!そういうことか!!  おぬし、わしらをっ!! この心優しき仲間たちを!! だましていたなっ!!」

だ、だますつもりじゃ!

「やかましい! かくなる上は…」

ちょ、ちょっと待ってください! まさか! あなた!何をする気ですか! みんなを雲の国にワープさせてはいけません!

「わしはこの世界じゃなんでも出来るんじゃ! 忍術だって使える! そうさ!夢だからな! わしは一緒には行けないが… みんなまとめて雲の国に送ってやる!」

え? と、頭領!?

「うるさいっ!!」

なりません!!

!!!

あなた方! なぜ!それがしを、それがしを止める!!

違うんだ。 ボクの身体が勝手に!
オレっちも! どうなってるんだ!!

「わしが!操っておる!」

なんで!

頭領ーーーーー!!



「忍法! 夢幻解除っ!!」



【 終 】

突然鈴の音が鳴り響く。 

消えるように透明になっていく頭領…

『え! 頭領が消えていく!』

「そうじゃ!わし以外、全員、雲の国に行くんじゃ!! いいか皆の者! 雲海を倒せ! みんなを、みんなを守るんじゃ!! お主らは何でもできる!! 信じるのじゃ!!」


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三蔵とカッパ、ブタ、そしてサルの旅は「テンジク」へ。 そしてこの後、彼らが「テンジク」で見るものとは…
この物語は、その後伝説となって語り継がれていく旅の一行のお話。 その物語の名前は…


… 謎の言葉を残して、みんなを動乱の起こっている「雲の国」へワープさせた頭領。 頭領の言葉の本当の意味とは…

そして、舞台は「雲の国」へ!